日本文学

山尾悠子『ラピスラズリ』 

山尾悠子『ラピスラズリ』 

 紙の本が欲しかったのだけれど、読んでないの世界で私だけでは?という気になり(TwitterのTLがそんな感じ)電書購入。 文章を読んでいるはずなのに脳内に映像が圧倒的な力で雪崩れ込んでくる。  続きもののように思われる絵画が掛けられた薄暗い回廊を、からだのない白い手先に手首を引かれてぐるぐると歩き…
宮部みゆき『三島屋変調百物語 おちか編』

宮部みゆき『三島屋変調百物語 おちか編』

 毎年一時帰国の度に図書館で借りて楽しみに読んでいたのだけれど、疫病のおかげで一向に帰国できない上に見ればおちか編完結などと書いてあったので思わず電書を購入。  三巻目の『泣き童子』までは絶対読んでたんだけどまっっっったく覚えてなかったので三巻目から再開。(一~二巻目も覚えてないので再読します) 若…
須賀敦子『ユルスナールの靴』

須賀敦子『ユルスナールの靴』

作家ユルスナールの生立ち、米国への意図せぬ移住、作家の精神的成熟が構想作品の実現に見合うまでの長い道のり、登場人物の歴史的・宗教的背景……。そこにノマドとして欧州の宗教観、精神世界を理解しようと長年もがいた著者自身の若き日の実体験、あるいは年齢を重ねて訪った旅先でほどけるように開けた景色が金糸のよう…
服部まゆみ『この闇と光』

服部まゆみ『この闇と光』

読了。久々に日本語の本。 父王からの濃密な愛情と闇に閉ざされた館で育つ囚われの王女。 凝った構成で章ごとに謎が解明していく。 事態の急変後の主人公の戸惑いを通じて虚構と現実のどちらに人の心の『真実』が存在するのか、その危うさに気付かされる。 面白かった。 のですが、私はカバー裏を最初に読んじゃったの…
田辺聖子『言い寄る』『私的生活』『苺をつぶしながら』

田辺聖子『言い寄る』『私的生活』『苺をつぶしながら』

読了。風邪でぼやっとしていたので、頭使わなくても読める日本語で読書。田辺聖子のおんなのこころを描く手腕に唸る。昭和50年代の話なので当時の男女観に少々辟易する部分もあるが、それを補って余りある乃里子の自由さと誇り高さ。 『言い寄る』乃里子、美々、五郎、剛などの魅力的な登場人物と下手するとドロ沼ともな…
池澤夏樹『きみのためのバラ』

池澤夏樹『きみのためのバラ』

読了。初読の作家さん。福永武彦のご子息だということしか知りませんでした。 世界の広がりを平らかに感じられる短編集。深読みが不要な理知的で整った文章。 表題作は、若き日に見た世界の奥深さと輝きを年齢と時代を重ねて振り返る、光の一滴のような一作。美しい。 『ヘルシンキ』のしんしんと内側から蝕まれるような…
皆川博子『U 』

皆川博子『U 』

読了。運命に歪められ人智を超えた域にまで引き伸ばされた二つの命は時代を超え戦争を生き抜きながら、神、民族、文化、歴史が魂に刻む刻印の深さの不条理さを問い掛ける。二人が死と命を内包する時間そのもののような地底と海底で静かに繋がる時「生きる」という事の本質が垣間見える。 (11/11/2020 過去のツ…
皆川博子『少女外道』

皆川博子『少女外道』

読了。 戦争、歪んだ家族関係、鮮烈な性的原体験などにより生の迷路を彷徨い続ける人々が死と闇へと惹き付けられていく足取りを美しくほの昏い筆致で描く。閉鎖した少女性と生命との相容れなさ、狂気と死の緩やかで抗い難い吸引力。生は凄惨たる戦場であり死の幻影はしばしば美しい。 『有翼日輪』強烈な恋情に鷲掴みにさ…
皆川博子『倒立する塔の殺人』

皆川博子『倒立する塔の殺人』

読了。日本語で何かわーっと一気に読みたいなと思い、前から気になっていた皆川博子さんに初挑戦。 これは皆面白いって云う筈だ〜。面白い! 入れ子の複雑な構造に細かで緻密な設定。 文学美術音楽の素養があればもっと楽しめるんだろうな。全部分かって読める人羨ましい。 アンリ・バルビュスの『地獄』が引用されるん…