The Lottery and Other Stories by Shirley Jackson

 個人的な社会の中にゆらゆら立ち上る煤のような闇を捉えてぎゅっと凝縮したような話ばかり。肌触りと後味の悪さは一級品。 表題作が最も有名ではあるが、物語としての体裁が整っていて分かりやすいからかと思った。

 毒の種類から云うと他の作品の方が個人的にはきついように感じられ、元気のなかった12月に’Like Mother Used to Make,’を読んだ時など、冒頭からまだ三作目だというのにフィジカルに気分が悪くなって本を置いたまましばらく読めなくなっていたほどだった。

 基本的に誰もが理解できる、けれどもできるだけ目を逸らしていようとする日常に存在する悪意、エゴイズム、差別意識を正確に描き出し鼻先に突き付けてくる、この居心地の悪さ、気分の悪さ。 慌ただしい都市生活にあふれ返る匿名の破れた夢、その中で失われていく個人の尊厳と正気。

 反して郊外生活の閉ざされ、逃れられない相互認知(監視?)の中、平穏という薄皮の下で激しく脈打ちながら育っていく憎悪、嫉妬、差別。 禍々しいとしか表現しようがないのに、否定しきれない、息遣いを感じるほどの親しみ。 読んでいるだけでざらざらとした悪意に撫でまわされているようで消耗する。

 少々飛躍するように感じられるかも知れないが、私は米国という国の凄さをこういう時に感じる。 広大で雑多で格差の大きな国だからこそ生まれる奥深い病と闇。しかし他文化でも恐らくそのまま通じるその中に在る核。 それらをここまで「そのまま」の形で読者に差し出せる胆力と才能を生み出す国。

 個人的には暫く同著者の本は読まなくていい。

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