‘Innocent Eréndira and Other Stories’ by Gabriel García Márquez

『エレンディラ』とその他の短編集、読了。マルケスの長編小説の醍醐味としては流れに飲まれる喜びがあると思うのですが、短編は入り口でぐるぐる回されて迷路にポイッと放り込まれて目が回っている間に出口に辿り着く感じ。
『エレンディラ』はその中でもしっかり分りやすいプロットがあり流れのある方ですが、如何せん10代前半の女の子が……(辛い) 私の地雷「子供が酷い目に遭う」(しかも〇的に)をガッチリ踏んでしまっていて読むのに時間がかかりました。

ですが、マジックリアリズムのカリカチュア的な描写なので普通に読む分にはそこまでしんどくはないと思います。 蹂躙されし者が最後に解放され全てを捨て走り去っていく話(しかし、その解放は輝かしいけれども幸福と等しいとは云えない)。 乾いた砂、太陽、天幕、オレンジ、愛と自由と血のお伽噺。

他の短篇に繰り返し出てくる、鏡、夢、死んだきょうだい(もう一人の自分)、生きながらの死のモチーフ。『百年の孤独』の最後の種明かしも鏡であったし、マルケスの中で大きな意味を持つ物なのかと思われます。

死と愛による閉鎖を描いた作品が多いです。鏡や夢(もっといえば意識や身体)など内側へ向かう閉鎖空間の中に囚われ、鏡の中の死んだ自分とそれに向き合う生きている自分、けれどもその境界は本当にそこにあるのか?本当は死んだのは自分で生きているのが鏡像ではないのか?と繰り返される疑問。

そして疑問には答えは出ず、諦念と死が生を蝕んでいく。恐ろしいまでの世界と死の無情さ、不変さ。 観念的な短編が多いけれども’Eyes of a Blue Dog’ ‘The Woman Who Came at Six O’Clock”Someone Has Been Disarranging These Roses’などは同じ核を保ちつつ非常に映像的。

あとマルケスの他の作品にもよく描かれていますが、男から女への無垢とも云える一心な愛情。女は現実離れした美女の場合もあり、普通のおばさんである自分の妻である場合もあり。そして愛情を向けられる女性は常に底の知れない感じがある。 興味深いのと同時に可愛げが感じられるような切ないような。

以上感想でした。 マルケスの作品は正直理解するために読んでいる訳ではないから感想も難しい。 次に読む予定の(=現在積み本の中にある)マルケスは’The General in His Labyrinth’です。いつ読めるかな…。

(11/11/2020 過去のツイートから転載)

Leave a Comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *