Nocturnes by Kazuo Ishiguro

カズオ・イシグロ『夜想曲集』読了。

理想と現実の間の大いなる流れの中、頭だけ出して遠い岸の光を眺めながら、流れに逆らえずにずっと同じ場所で揺蕩っているような物語たち。 夢に生きる人々の無意識の選民意識、手に入ったように見える夢の嘘っぽさ、嘘っぽい光の為に犠牲にする愛や誇り、自分を理想の自分に至らしめなかった世界への怒り、人生に沁みついて剥がせなくなったビターネス、才能というきらめきの持つ呪縛。

人生は下らなく、人間はみっともなく、莫迦莫迦しい出来事に思いもよらぬ程簡単に巻き込まれる。 イシグロ氏の作品にしては軽妙でユーモアに溢れイベント多めの作品群。

私は文章に透明感のある作家が好きなのですが、イシグロ氏もその一人です。いつもながら品のある筆致。 本当に読みやすい。前にも書いたけど真水のような文章。 全部面白かったけど、Crooner, Nocturne, Cellistsが特に好きだったかな。

(11/11/2020 過去のツイートから転載)

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